年末調整は、文字通り年末に実施することになっていますが、下記の人は年末ではありませんので、注意が必要です。
1、退職時に年末調整を実施する人
・年の中途で死亡退職した人
死亡したことにより、その直前に支給された給与がその年の最後の給与となるためです。
・著しい心身の障害のため年の中途で退職した人で、その退職の時期からみて本年中に再就職ができないと見込まれる人
このケースは判断をする人の主観で大きく左右されますね。最近は、うつ病の方が増えてきていますから、このようなケースも増えてくるのでしょうね。
・12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人
ここでいう支給期とは、給与を受け取る日のことです。12月1日とか、15日とか。受け取る給与が何月分かは関係ありません。ということは、11月末日締切の12月10日払いの給与を受け取る人が12月の11日に退職して、再就職をすることは十分考えられます。そして、12月中に新しい職場で給与を受け取ることもありです。しかし、こんな事例は例外とみなされて、12月11日に年末調整をしなければなりません。
・いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けると見込まれる人を除きます。)
所得が給与所得しかない場合は、103万円までは所得税がかかりません。最高額の103万円ですと、給与所得控除後の金額が38万円で、本人の基礎控除が38万円なので、課税所得金額は0円となります。よって、年末調整によって、全額還付されるというケースですね。この範囲内ですと、ご主人の配偶者控除の対象となりますので、この103万円までしか働かない奥様が多いです。最低賃金がなかなか上昇しないのは、ここにも原因がありそうです。最低賃金が上昇すると、103万円に抑えるためには、勤務時間数がますます減っていくことになるからです。共働き世帯が大半となった現在では、この配偶者控除を見直して、奥様方にもっとたくさん働いて稼いでいただく方が日本経済のためになるのではないかと思います。
2、非居住者となったときに年末調整を実施
・年の中途で、海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非居住者となった人
一度転勤したら、もう年内には日本には戻ってこないとみなして、その時点で受け取った給与がその年の最後の給与となるのです。日本での所得税の課税を逃れても、転勤先の海外の国で、別の所得税の類が課税されますので、日本での課税はこれにて終了となります。
実際の給与実務としては、12月は賞与が支給されることが多いので、12月に受け取る給与又は賞与のどちらか遅い方の給与計算時に年末調整を実施して、その給与賞与明細に「還付金」欄を設けて還付するケースが多いですね。中には、給与支払い、賞与支払いそして年末調整支払と3度に分けて支払うケースもあります。年末調整だけ別建てで実施・支払をすることで、受け取る社員側がうれしい、という事情があるのでしょうね。